火星ってどんな星?

ここでは、火星とはどんな星(天体)なのか、簡単に解説します。
火星について本当に解説しようと思うと、1ページどころか、数冊の本が必要になります。もっと詳しく知りたいという方は、ページ最後のリンクや、火星についての本などを参照してください。

ハッブル宇宙望遠鏡でみた火星
ハッブル宇宙望遠鏡によりみた火星 (Photo: D. Crisp (JPL), the WFPC2 Science Team and NASA)

地球の1つ外側にある惑星

火星は、地球の1つ外を回る惑星です。惑星は、太陽のまわりを回る大きな天体で、火星は太陽に近い方から、水星、金星、地球の次となります。
火星と太陽との平均距離は約2億2800万キロです。ちなみに、地球と太陽との距離は約1億5000万キロです。差し引きすると、火星と地球とは約7800万キロ離れていることになります(注1)。 火星の半径は約3400キロで、地球の半径(約6400キロ)の半分ちょっとの大きさであることがわかります。つまり、地球よりかなり小さい惑星です(ちなみに、水星は半径約2400キロ、金星は半径約6000キロです)。重さは地球の10分の1ほどです。
火星の自転周期は24時間37分で、地球(ほぼ24時間)と実はかなり似ています。この火星の1日のことを「ソル」(sol)といいます。また、火星が太陽のまわりを1回回る周期、すなわち火星の1年は約687日です。地球のつきでいえばほぼ1年10ヶ月ほどにあたります。
火星には「フォボス」と「デイモス」(ダイモス)という2つの衛星があります。それぞれ、大きさはだいたいさしわたしで約25キロ及び15キロほどとたいへん小さな衛星で、両方とも不規則な(球形ではない)形をしています。

「戦いの星」から火星人へ

火星は特徴的な赤い色をしています。古代の人々は、この赤い星をみて、血の色からなのか、いくさ(戦争)を連想したようです。そのため、火星はいくさの神、軍神としてあがめられました。火星を英語で「マーズ」(Mars)といいますが、これはローマ神話の軍神「マルス」から来ています。また、ギリシャ神話の軍神「アレス」も火星を表すのによく使われます。
古代は赤い星を神としてあがめるだけでしたが、時代が下って望遠鏡が発明されると、火星表面が詳しく観察されるようになりました。19世紀、望遠鏡の精度が上がると、火星表面の模様が詳しく観測されるようになりました。
1877年の火星大接近のときには、イタリアの天文学者、ジョバンニ・スキアパレッリが火星表面に筋状の模様を発見、これを水路と考え、イタリア語で水路を意味する「キャナリ」(canali)と報告しました。ところが、この報告が英語に訳された際、運河などを意味する「キャナル」(canal)と誤って翻訳されてしまいました。キャナルとなると、「人工的に作られた水路」を意味してしまいますので、ここから「火星には知的生命体がいる」という話になり、火星人の存在がクローズアップされるようになります。
そして、この火星、そして火星人の発見に魅せられ、自ら私財を投じてまで天文台を建設し、火星観測に一生を捧げたのが、アメリカの天文学者・実業家であるパーシバル・ローウェルです。彼がアリゾナ州フラッグスタッフに建設した天文台(ローウェル天文台)では、彼自身が火星表面の筋模様を観測し、何百枚にも及びスケッチを残しました。もちろん、現在ではそのような筋模様が存在しないことは判明していますが、当時なぜ彼にそれが見えたのかはいまだに謎です。
結局、ローウェルは火星人の証拠をみつけることなく1916年に死去し、この天文台で1930年、後継の観測者クライド・トンボーによって冥王星が発見されることになりました。冥王星の記号はPとLの字を組み合わせたものですが、これは冥王星の英語Plutoだけでなく、パーシバル・ローウェルのイニシャルにちなんだものでもあります。

探査によってわかった火星の姿

1950年代末に宇宙開発が本格化し、人類が宇宙へと探査機を送り出すようになると、月と並んでまっさきに火星へも探査機が打ち上げられるようになりました。地上からの望遠鏡ではあまりよくみることができなかった火星も、火星のすぐそばへ近づく探査機であれば、表面の様子をより鮮明に捉えることができます。
1964年、アメリカの探査機マリナー4号が、はじめて火星の表面の写真を地球に送信することに成功しました。送られてきた写真では、火星の表面はクレーターに覆われ、スキアパレッリやローウェルが見た(とされる)筋模様などはどこにも存在しませんでした。この探査により、火星に生命がいる可能性はぐんとしぼんでしまいました。
マリナー4号による火星表面の写真 マリナー4号により撮影された火星表面の写真。不鮮明ながらも、大きなクレーターや、山のような地形が確認できる。筋模様は確認できない。(Photo: NASA)
その後、1972年にはマリナー9号が火星を周回探査し、大量の写真を地球に送信します。この写真には水が流れたあとのような地形などがみつかり、火星にはかつて水が存在したのではないかという可能性が持ち上がります。
生命を本格的に調べるために送り込まれたのがバイキング探査機です。2機の探査機からなるバイキング探査機は、1976年、史上初の火星着陸を行いました。送られてきた写真は、地球の砂漠のような荒涼とした風景で、生命の存在にはつながりそうにありませんでした。また、バイキング探査機が搭載した生命実験装置でも、結果は生命の存在にいずれも否定的なものとなり、少なくとも今は火星に生命はいない、という見方が大勢を占めるようになりました。
バイキング1号が撮影した火星表面の写真 バイキング1号の着陸機が撮影した、着陸点付近の写真。地表は赤く覆われているだけでなく、空も赤っぽくなっていることがわかる。(Photo: NASA)

生命の痕跡を求めて

火星は薄いながらも大気があります。大気は地球の100分の1ほどしかなく(大気圧が地球の100分の1=100分の1気圧)、成分はほとんどが二酸化炭素です。
また、火星の表面温度は平均してマイナス40度ほどです。暖かいところでは0度を越える場合もありますが、寒いところではマイナス100度にも達します。
火星の表面の砂は、風によって舞い上げられます。この風が非常に激しいと、砂嵐となります。砂嵐は場合によっては火星全体を覆うこともあり、地球から望遠鏡で観測できることもあります。
このように、火星は地球とはまったく異なり、生命がいそうにはとてもみえません。
一方で、火星には水が流れたあとがみつかるなど、少なくともかつて(35億年前くらい)には地球と似た環境であった可能性があります。
アメリカの探査機「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」(2機の探査機からなり、それぞれ「スピリット」と「オポチュニティ」と呼ばれる)は、2004年1月、火星に着陸しました。このローバーは火星の表面を動き回りながら観測を行い、2004年3月、NASAはこれらのローバーが火星表面で、かつて水が豊富に存在したことを示す証拠がみつかったと発表しました。生命の痕跡、さらにはかつての生命が地下などで生き延びている可能性への期待が高まりました。
2008年に火星に着陸した探査機「フェニックス」は、火星の極地域で氷を探すことを目的としていました。フェニックスは搭載しているロボットアームで地下を掘り、氷をみつけ出すことに成功しました。
さらに2012年に火星に送り込まれたローバー「オポチュニティ」も、火星表面にかつて水が存在していたことを示す証拠を見つけています。
火星に生命がいる(いた)のかについてまだ結論が出ていませんが、一時期考えられていたほど、火星が生命の存在に適さない星である、という認識は消え、科学者の多くは、生命の存在が少なくともある時期には可能であったと考えています。
しかし生命存在の証拠はなかなか発見されていません。NASAをはじめとする各国の宇宙機関は、火星の生命探査を大きな課題として掲げ、たくさんの探査機を送り込んでいます。

火星に人間が降り立つ日

火星は月に続き、人類が訪れようとしている場所でもあります。
NASAは2035年をめどに、火星に人類を送り込もうとしています。現在の計画では、2020年代に月の周りに宇宙ステーション(深宇宙ゲートウェイ)を構築、月面基地を設営して準備を行ったあと、有人火星探査を実施することになっています。
一方、火星に人間を送り込む動きは民間でもあります。もっとも有名なものが、アメリカの宇宙ベンチャー企業、スペースX(スペース・エックス)による有人火星宇宙船計画です。スペースX社は2024年に自社のロケットで火星へ宇宙飛行士を送り、火星に人類を到達させるだけではなく、火星から地球へ戻るために必要な燃料を作り出す施設を建設することを目指しています。
ただ、火星へ人間を送り込むためには、超えなければならない多くの壁が残っています。
最大の壁は、宇宙飛行士たちが火星へ往復する日数の長さです。アポロ計画で月に行くためには片道3日半ですみました。一方、火星へ往復するためには、最短でも1年半かかると見積もられています。宇宙飛行士がその間に浴びる放射線量の問題や、1年半もの間2〜3人の仲間だけで暮らす精神面の問題など、解決すべき問題はまだ数多く残っています。
そのほかにも、火星往復を達成するための大型のロケットを製作するための技術的な問題や、そもそも有人火星探査を実施するための費用(ある見積もりでは8兆円と見積もられています)の調達といった経済的な問題、さらには火星に人類(など)が到達することで、火星の環境を汚染してしまい、火星に存在する(かも知れない)生物を危機に追いやる可能性といった倫理的な問題など、超えなければならないハードルは膨大です。
それでも人類は、一歩一歩問題を解決しながら、この赤い星への挑戦を続けていくことでしょう。いつの日か、火星からの人類着陸の生中継映像をみる日がやってくるかも知れません。


火星についてもっとよく知るために

ここでは、火星についてより知るためのサイト・ページを紹介します。火星大接近で火星に興味を持たれた方は、ぜひこちらのページでより詳しい情報を探してみてください。

  • 火星・赤い星へ - 月探査情報ステーション
    火星と火星探査について解説した、月探査情報ステーションのページです。火星の生命や「火星の人面像」などのトピックについてもまとめられています。
  • 火星探査〜赤い星への挑戦〜 - 月探査情報ステーション
    過去・現在・未来(計画中)の火星探査全てを網羅したページです。これまでどのような火星探査が行われてきたのか、そして将来どのような火星探査が行われるのか、そして人間が火星に行くにはどのような問題があるのか、といったことを解説しています。
  • 火星 - 宇宙情報センター
    JAXA宇宙教育センターが運営するサイト「宇宙情報センター」による火星の解説です。コンパクトながら非常によくまとまっています。なお、宇宙情報センターでは火星探査をはじめとして宇宙に関する話題が非常に豊富です。ぜひお役立てください。

注釈
  • (注1) これは火星と地球が太陽から一直線になったとき、かつそのとき火星が公転軌道の平均的な距離にいた場合です。火星の公転軌道はかなりのだ円となっており、いちばん離れるときで約2億4900万キロ、いちばん近づくときで約2億600万キロとなります。いちばん近づくときに太陽・地球・火星が一直線になれば、地球との距離は5600万キロとなります。これが「火星大接近」といわれる状態です。一方、火星が地球からみて太陽の反対側にいて、それが公転軌道のいちばん遠いところであれば、火星と地球との距離は約3億9900万キロ…ほぼ4億キロとなります。